韓国ドラマファン必見!
Netflixオリジナル作品「The 8 Show / 極限のマネーショー」が話題沸騰中です。
これまでにない奇想天外なストーリーテリングと緻密なキャラクター描写で、一瞬たりとも目が離せないこのドラマ。
今回は「The 8 Show / 極限のマネーショー」のあらすじ、キャストex を徹底解説し、深層に迫る考察(感想レビュー)をお届けします。
映画の概要
- 日本語タイトル:The 8 Show / 極限のマネーショー
- 韓国語タイトル:더 에이트 쇼
- 英語タイトル:The 8 Show
- 製作:2024年
- エピソード:全8話
- 監督・脚本:ハン・ジェリム
- 原作:ペ・ジンス
- 主演:リュ・ジュンヨル、チョン・ウヒ 他
- 吹き替え:日本語の吹替配信あり
個人的な評価
サバイバル系ドラマはあまり好きではないのですが、このドラマは違いました!
設定は奇抜で斬新ですが、取り扱っているテーマは深淵で、考えさせられることが多いです。
登場人物は8名だけですが、さすがの演技力!
この8人の中に「あなたの分身」のようなキャラクターが見つかるかもしれません。
とくに以下のような人にはオススメです。
- 過去のトラウマに悩む人
- SNSに疑問をもっている人
- 人との比較で悩んでいる人
- 他人軸で生活してしまっている人
- 毎日、精神的に追い詰められている人
「The 8 Show」の動画配信はどこで見れる?
リュ・ジュンヨル、チョン・ウヒ出演の「The 8 Show / 極限のマネーゲーム」は、Netflixシリーズの韓国ドラマで、ネトフリの独占配信です。
キャスト ex
1階の住人 / ペ・ソンウ
以前はピエロで、病弱な娘が1人いる。
片足が不自由なため、みんなに迷惑をかけていると気に病んでいる。
もくもくと一生懸命に自分のやるべきことを果たす人。
2階の住人 / イ・ジュヨン
男顔負けの体力と武術の持ち主。
正義感が強く、曲がったことが大嫌いな性格。
そのため、6階の住人と衝突することが多い。
3階の住人 / リュ・ジュンヨル
このドラマの主人公。
投資に失敗して借金取りに追われたことから、このマネーゲームに参加。
優柔不断で臆病。
人の顔色を伺うことが多いものの、優しい心の持ち主。
4階の住人 / イ・ヨルム
元デパートの駐車場案内係。
以前、アイドルを目指していたことがある。
周りに調子を合わせ、うまく渡り合っていこうとする。
計略家の一面も持ち合わせる。
5階の住人 / ムン・ジョンヒ
以前は、医師のセレブ妻。
チーム1の平和主義者。
なにかもめ事が起こったときの仲裁者。
その優しい性格がチームに災いをもたすことに・・。
6階の住人 / パク・ヘジュン
元野球選手。
短気で喧嘩っ早い性格。
暴力を使い、力づくで物事を解決しようとする。
8階住人とつるむことが多く、2階住人と仲が悪い。
7階の住人 / パク・ジョンミン
元映画監督。
頭脳明晰でチームのブレーン役。
マネーゲームのシステムや本質を鋭く分析、解明する。
謎めいたキーパーソンでもある。
8階の住人 / チョン・ウヒ
元パファーマンス・アーティスト
自由奔放な性格で自己中心的。
面白いことや刺激なことが何よりも大好き。
あらすじ(ネタバレあり)
Netflixで大人気の韓国ドラマ「The 8 Show / 極限のマネーゲーム」。
人生の辛酸をなめた8名の目の前に、ある日、白いリムジンが止まります。
その車に乗って、呼び集められた場所は、まるで本物のように作られた「偽物」の集合住宅。
そこには1階から8階まで、それぞれ1部屋ずつがあり・・・
集合住宅に入る前に、おのおのが引いたカードの番号で入居する階数が決められていました。
そのほかにも、奇妙なルールがいくつか。
奇妙な共同生活のルール
- 運営側に決められた服を着る
- 飲食は無料支給。
そのほかのものはインターホンで注文できる
(ただし、高額な特殊価格となる) - 広場での共同購入は「時間」で支払われる
- 室内のものは外へ持ち出せない
- 0時~8時までは自室で過ごすこと
- 監視カメラを遮るような行動をしてはいけない
- ショーは午前0時から開始。
- 滞在時間に合わせて、賞金が与えられる
- ルールの違反者は賞金の半分を没収される
- 死人が出たらゲーム終了
8人のメンバーたち
このマネーゲームに参加した8人は、お互いに知らない者同士。
戸惑いながらも、広場に集まり自己紹介を始めます。
が・・・
お互いの本名は名乗らず、あてがわれた部屋の階数で呼び合うことになります。
主人公の3階住人ジンス(リュ・ジュンヨル)は言うに及ばず、深い心の傷と闇を抱えているメンバーたち…。
また、寡黙な者、お調子者、荒くれもの、エキセントリックな者・・・。
一筋縄ではいかない個性的なメンバー8名の、運命的な出会いでした。
この「格差」はいったい?!
一通りの自己紹介が終わったあと、空腹を覚える参加者たち。
そんな中、なぜか8階の住人だけが、「わたしはすでにごはんを食べた」と発言します。
この8階の住人の発言に違和感を覚えた他の7名の参加者たち・・・。
8階の部屋に興味を持ち、みんなで彼女の部屋を見学に行くことになります。
そこで、彼らが目にしたものは・・・
まるで高級ホテルのような豪華さと広さをもつ、最上階の8階の部屋でした。
その一方・・・
最低層階の1階の部屋はみんなが同情するほど狭く、何もない有様。
あまりの格差に、7名(8階の住人を除く)は驚愕します。
また、それだけではありません。
最上階(8階)に住む者にはさらなる特権がありました。
- 誰よりも多額の賞金を稼ぐ
8階の住人は、他の階の住人よりも多くの賞金を獲得。
1分ごとに増える賞金は1階が1万ウォンであるのに対し、8階は34万ウォン。
その差は実に34倍。 - 水と食べ物をまず最初に受け取れる
水と食べ物は室内にある配達口から支給される。
リフトは8階から下へのみ降ろされる。
(下から上へあげることはできない)
このシステムにより、8階の住人が生殺与奪の権を握っている
この部屋の階数による大きな格差は、今後、参加者たちの行動や人間関係に大きな影響を与え、引き起こるトラブルの要因となっていきます。
また、特権の格差だけではありません。
メンバー内で「負の格差」が明らかとなっていきます。
トイレがないため、溜まっていく排泄物を誰がどのように処理するか、という問題が持ち上がるのです。
このような極限の状態で、マネーゲームのショーが日々、繰り広げられていきます。
マネーゲームのルールは以下のとおりです。
驚愕の謎ルール
- ゲーム時間は広場の電光掲示板に表示される
- ゲームの時間が経つほど、賞金が増える
- ゲーム時間がゼロになったらゲームオーバー
- 謎のルールでゲーム時間が増える
当初、8人のメンバーは、「階段の駆け上がりで時間が増えた」と思い込み、必死に階段の上り下りを開始します。
最初は一斉に、がむしゃらに頑張っていましたが、あまりの運動量に疲労困憊・・・。
その数日後には2チームに分かれ、動休動休と休日をもうけることで効率的なチーム戦を展開します。
が・・・
ある日を境に、時間の増え方が激減します。
ゲーム時間がついに尽きてしまう!
というところまで追い込まれたとき・・・
彼らは気づきます。
時間が増えるのは、階段の昇降という「労働」ではないと・・・。
時間が増える「謎のルール」は、「面白さ」にあったのです。
「極限のマネーゲーム」のシステムは・・・
ゲームに参加している8名が「面白い見せ場 / コンテンツ」を提供することで、監視カメラの向こう側の人間(視聴者)が時間を加算するという、恐ろしいものだったのです。
メンバー8名の中に歴然とある「格差」。
できるだけ多くの賞金を獲得したいという人間の貪欲さ。
排泄物の処理さえままならない劣悪な環境。
チーム内の敗者になりたくないがゆえの心理戦と駆け引き。
ゲームに参加する以前の過去のトラウマ・・・。
これらすべての想いを抱えながら、8名それぞれが「極限のマネーゲーム」に挑みます。
彼らが最後に得るものは、お金か、正義か、虚無か・・・。
あなたの目で、その結末をぜひご覧ください。
感想(ネタバレ含む)
わたしは個人的にバイオレンス系やサバイバル・ゲーム系のドラマや映画が苦手です。
ですが・・・
「The 8 Show」は大好きなチョン・ウヒが出演しているので迷わず視聴!(笑)
結果、観て良かったです。
以下、個人的な感想を綴ります。
心理的プレッシャーとの闘い
「The 8 Show」のマネー・ゲームは、参加者8名に絶え間ない心理的プレッシャーを与えます。
特に以下の4つのプレッシャーは、相当な心理的ストレスに違いありません。
もし、自分がその場に立たされたら・・・と想像しながら観ました。
階数による格差
まずは何といっても、住んでいる階数によるあからさまな「格差」。
「ただ上階に住んでいる」というだけで、最大の収入格差はなんと34倍!
しかも、階数を決めたのは本人の努力でも能力でもなく・・・
引き当てた「カードの番号」という、まさに「運」のみ。
その理不尽さが、さらに階層間の不公平感を増幅させ、心理的な緊張を生み出すのでしょう。
これは、世間でいう「親ガチャ」そのもののような気がします。
「格差」があまりにも開きすぎていると「諦め」の境地になりそうですが・・・
ここは一獲千金を狙える、マネーゲームの世界。
理不尽さは不公平感とストレスだけでなく・・・
下層階のメンバーの心に強い競争心を植え付けていくのです・・・。
少しずつですが、確実に貧富の格差が広がりつつある日本。
この「格差」という、これまであまり意識してこなかった社会問題に、今後、どう向き合っていくのかが問われている気がしました。
生殺与奪の権は誰の手に?
この8名の奇妙な共同生活は、監視カメラの向う側、運営者たちの決めたルールが全て。
衣食住は無料で支給されますが・・・
食に関しては、厳格かつ冷酷なルールがあります。
それは、「水と食事はリフトで8階からのみ下に降ろすことができる」というもの。
もし8階の住人がリフトを降ろさなかったら・・・
もしくは、自分が多くをネコババして、少量だけを下に降ろしたら・・・
階下になればなるほど、生命の危機に瀕します。
実際、メンバー全員の投票で8階の住人が「糞尿処理係」に選ばれたとき、彼女は躊躇なくこの生殺与奪の権を行使します。
そして、指1本動かすことなく、階下の7名を自分の思いのままに屈服させるのです。
誰かの手に「生殺与奪」の力を委ねるのは、本当に恐ろしいと思いました。
備えあれば憂いなし、ではありませんが、「自立」ができる環境のありがたみを噛みしめるワンシーンとなりました。
恐怖の監視社会
8名の共同生活は絶えず、複数台のカメラで監視されています。
この監視カメラの存在は、メンバーたちに「常に誰かに見られている」という心理的プレッシャーを与えます。
いつ、どこにいても、何をしていても、他者の目を意識しなければならないのです。
生活の中心が「自分」ではなく「他人軸」となってしまう怖さと虚無感。
インスタ、X(twitter)、etc…と、「映え」を意識しながら生活しなければいけない私たちへの警告のような気がしてなりません。
とくに今の子どもたちは生まれたときからデジタル・デバイスに囲まれ、SNSはすでに生活の一部です。
「盛った / 盛れなかった」と自然体でいること、素のありのままの状態でいることが難しい世代です。
毎日のほんのわずかな時間でも「デジタル・デトックス」ができればいいな、と自戒を込めて思った次第です。
面白さの強要
監視カメラの向こう側の運営者・視聴者が求めていたのは「労働」ではなく、「面白さ」でした。
最初は、8名のなりふり構わない「階段の昇降」や些細な仲間割れの喧嘩に満足していた彼らでしたが・・・
徐々にそれでは飽き足らず・・・
さらに強い刺激を求めるようになっていきます。
人間は悲しいかな、新鮮な経験や刺激を常に求めてしまう生き物なのでしょう・・・。
新しいことを学びたいという知的好奇心や、非日常を経験したいと願う旅行など、健全で前向きな動機であれば素晴らしいことなのですが・・・
日常生活の単調さから安易に逃れるために、私たちは興味を引くゴシップに心を奪われてしまうときがあります。
わたし個人も好奇心旺盛で、飽きっぽい性質があるので、よくよくわかります💧
監視カメラの視聴者が「面白さ」を求めるのは、この刺激を満たしたいという欲求そのもの。
そして、その欲求が時間の経過とともにエスカレートして・・・
より強烈な刺激や衝撃的な出来事にしか満足できなくなっていく・・・。
その貪欲さの無限ループが、多額の賞金となって消費されていくさまは背筋が凍る思いです。
参加者の暴力を厭うどころか喜んで容認するのは・・・
それが対面ではなく、カメラを通してのある種、バーチャルな世界だからかもしれません。
自分に直接関係のない世界は、現実に存在していても、彼らにとってはあくまで仮想世界。
SNSで酷い誹謗中傷を受けた人たちの悲しいニュースを聞く機会が増えましたが、同じような心理が働いているのかもしれません。
「イジリ」という名のもとにおこなわれる「いじめ」も、「面白さ」の強要、エスカレートした刺激の歪曲したカタチなのでは?という思いがわいてきました。
極限状態での人間関係
サブタイトルが「極限のマネーゲーム」となっているように・・・
ゲームの参加者8名は、まさに極限状態に置かれます。
階数による格差もそうですが、トイレがないという過酷な設定も彼らに心理的なストレスを与えます。
弱者を庇うもの、傍若無人にふるまう者、協力し合う者、裏切る者、力づくで相手を屈服させる者、自分だけ怠けようとする者、など様々な行動パターンが露わにされるのです。
そして、体力、知力、精神力、行動力、共感力、忍耐力など1人1人の人間性が問われていきます。
こうした極限状態で、普段は抑えられている本性や心の闇、トラウマが露呈するとき・・・
人はようやく自分の内面について、深く考える瞬間を持つのかもしれません。
それぞれが自分自身の恐怖や弱さと直面し、自分がどれだけ強く、また弱い存在であるかを理解する機会となります。
参加者8名にはそれぞれに傷ついた過去があり、心の葛藤があり、悲しみがありました。
その中でも、わたしは特に2人の人物に心が動きました。
5階女性の考察
まず1人目は、5階の住人の女性。
彼女は感受性と共感力が高く、争いごとを嫌う平和主義者。
そんな彼女は、チームの中で揉め事が起こると仲裁役となり、周囲を和やかにする心優しい女性。
しかし、そんな彼女にも暗い過去がありました。
夫の不倫に傷つき、その心を癒そうと自身も愛人を作り、借金をしてまで相手に貢いだ結果・・・
離婚と生活破綻という痛ましい経験をしています。
それにもかかわらず…
6階の元野球選手のマッチョな男性と抱き合い、彼を拘束していた縄目をほどいてしまったことで、周囲を窮地に立たせるという失敗を繰り返してしまいます。
異性関係で失敗したのなら、男性に対して慎重になるのでは?と思ってしまうのですが・・・
このような行動パターンの繰り返しは、彼女のトラウマの影響と深く関わっているのかもしれません。
トラウマを経験した人は、その痛みから逃れようとする一方で、無意識のうちに同じ状況を再現し、再び傷つくことがあると聞いたことがあります。
過去の傷が癒されていないため、同じ過ちを繰り返してしまう・・・と。
これは一種の自己破壊的な行動であり、無意識のうちに自分を罰しようとする心理が働いているのでしょう。
私も彼女と同じように、同じ行動パターンの失敗を繰り返してしまうことが多々あります。
意識・無意識的に癒されていないトラウマがあるのかな?と思い返しながら、このシーンを観ました。
また、彼女の他人を思いやることのできる優しい性格、最近話題になることも多いHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の気質をもつ彼女にとって、囚人(高層階に住む住人たち)の監視はなにより酷な仕事だったかもしれません。
そんな彼女が、最後に6階男性の大事な部分を切除するという奇怪な行動をとりますが・・・
過去、夫の不倫や彼女自身の愛人との関係から、彼女にとって性そのものがトラウマの象徴となっていたのでしょう。
6階の男性の象徴を切除するという行為は、彼女にとっての性的トラウマの象徴を物理的に排除するということ・・・。
彼女自身の心の中の痛みや苦しみを取り除こうとする試みだったのではないか、と思います。
この誰よりも心優しく、傷ついた心をもつ5階の女性を、ぎゅーっとハグしてあげたい気持ちになりました・・・。
1階男性の考察
もう1人は、最下階に住む1階の男性。
彼は片足が不自由で、うまく歩けません。
さらに・・・
彼の一人娘が病気になったにもかかわらず、治療費を工面できず、病院から追い出されるという厳しい状況に直面しています。
そんな彼は、保険金でなんとか娘を救おうとした矢先、白いリムジンに出会うのです。
私は、当初、この1階住人の男性に一番、好感を抱いていました。
彼は足に障害があるため、階段の昇降に貢献できません。
そのことに負い目を感じている彼は、自分の部屋を「排泄物」の保管場所として提供します。
誰よりも狭い1階に住んでいる、のにです。
また誰もが嫌がる「糞尿処理係」を買って出て、もくもくと働きます。
寡黙で控えめですが、元ピエロということもあり、哀愁を漂わせた中にもユーモアがあります。
そんな彼が、「マネーゲームを終わらせ、共同住宅を出る日」の決定を委ねられます。
最下階で、稼ぐ賞金が一番少ない彼が「目標金額を貯め終わる日」をゴールにしようという、みんなの心遣いでした。
その決定が委ねられたとき、彼はきっぱりと「10憶ウォンが貯まるまで」と答えます。
そのとき、彼は理由を述べませんでしたが・・・
娘思いの父親であった彼の心情を思うと、娘の「治療費」だと確信していたのですが・・・
彼が目標金額を貯めた日に、その使いみちが明らかとなります。
彼は賞金のほぼすべてを、病気の娘のためではなく、「1階から8階へ部屋を交換してもらうための費用」として使うのです。
(結局、そのお金は「部屋交換の方法」を記したマニュアルの代金として没収。部屋交換はありえないほどの高額とわかり、望みは消え失せます)。
私は正直、この男性の行動にがっかりしました。
「部屋交換」など考えず、稼いだ賞金を持ち帰れば、娘さんの病気が治ったかもしれないのに・・・と。
けれども、よくよく考えてみると、「部屋交換」は彼の単なる自己中心的な欲望ではなく、彼が人生を賭けた大事だったのかもしれません。
自己価値を見出すため
足に障害を持つ彼は、これまでの人生で何度となく差別や嘲笑を受け、孤独感や疎外感を味わってきたのではないでしょうか?
わたしの兄は病気の後遺症で障害を持つようになったので、彼の気持ちが少し、理解できるような気がします。
「道化」となったのも、みんなが嫌がる仕事を率先して引き受けたのも、彼の優しさと同時に、自己価値を低く見積もっていたから、なのかもしれません。
1階から8階への移動は、彼が自分の価値を他の7名に認めさせるため。
いや、むしろ、他人というより、自分自身のために自尊心を回復させようとする試みだったのではないでしょうか?
だからこそ彼は、「8階のお金で部屋交換の代金を支払おう」という提案をきっぱりと断り、自分がようやく貯めた、なけなしの10憶円を使ったのだと思います。
自分の肯定感や自尊心を築くのは、他人(のお金)ではできない。
自分自身の在り方、結果なのだ
という、強い決心だった気がします。
新たな環境での再出発
彼のこれまでの人生の困難・不遇さは、「1階」という物理的な位置に象徴されているのかもしれません。
すなわち、「不運 / 運のなさ」です。
1階に住んでいる自分も、最上階に住んでいる8階の「イカレた女」も大差はない。
貧乏か金持ちか、障害があるか健康か、そこにあるのは能力でも、努力でも、才能でもない。
そこにあるのは・・・理不尽なまでの「運」だと。
彼はようやく貯めた全財産を使い果たしてでも、その「運」に一矢を報いたかったのではないでしょうか?
1階から8階に移動することは、彼にとって新たなスタート。
過去から脱却する唯一の手段、だと思っていたのだと思います。
その確固たる決意が、目標金額は「きっかり」10億円という言葉にあらわされている気がします。
家族のための自己犠牲
結局、彼は、何とも壮絶な最期を迎えます。
が・・・
彼の当初の計画では、他の7名と一緒に、稼いだ賞金を抱え、愛する家族のもとに凱旋するつもりだったはずです。
娘のためにお金を直接的には使わない選択をしましたが、8階に部屋替えさえできれば、経済的にも精神的にも強くなれる・・・。
そして、強くなった自分は家族を助けることができる!と信じていたのかもしれません。
自分自身の自尊心のためだけではない・・・。
彼は愛する家族のために懸命に働き、現状を打破しようとしたのでしょう。
1階住人男性の結末
1階男性の最期はあまりに壮絶なものでした。
彼はなぜ、最期、道化師となって宙を舞ったのか?
全財産を失い、
8階への引っ越しも叶わなかったことに絶望しての自殺だったのか?
再度、マネーゲームに参戦して賞金を稼ぐために、本業の芸で「時間稼ぎ」をしようとしたのか?
個人的には、どちらともとれる演出だったと思います。
そして、どちらの解釈でも良い、と思うのです。
どちらにしても、ピエロになった1階さんは、「本来の自分」に戻りました。
マネーゲームに参戦する前の自分自身に。
体に障害があり、貧しく、困難の多かった人生。
けれども、彼はそこで懸命に生きていました。
「道化」となって、家族を懸命に支えてきました。
不自由な足でしたが、
「今まで観たことがないであろうものを
お見せします」
と言えるくらい、自己鍛錬をし、技を磨いてきました。
1階さんは、謙虚で、誠実で、家族思いの男性だったのです。
そう・・・
カメラの向こう側、「他人の目」を意識する前までは・・・。
他人と比べれば、誰だって「不幸」を感じる点はいくつでも出てきます。
家庭環境、経済状況、学歴、職業、能力、容姿、コミュ力、etc…
「無いもの」にとらわれて、ついついその欠けを埋めようとしてしまう私たちですが・・・
他人目線の比較をやめて…
「あるもの」「与えられているもの」に目を向けるなら、幸せの種はそこにある気がします。
ぎりぎりの綱渡りをしながら、高く高く、空高く舞い上がった彼は、そこで「娘の笑い声」を聞きます。
体が不自由でも、お金は無くても、8階には引っ越せなくても、家族に愛され、低層階の人たちに愛され、ピエロ仲間に愛されていた自分の価値を見出したのではないでしょうか?
私たちも1階さんと同じ、かもしれません。
ぎりぎりの綱渡りのような毎日・・・。
わたしは家族の介護を終えて帰宅すると、ふーっと思わずため息が出てしまいます。
将来が不安になり、やるせない気持ちになることもあります。
そんなとき、カメラ(他人の視線)に目を向けたらさいご、
自己憐憫の嵐に襲われてしまいます。
ぎりぎりの綱渡り状態になったら、
1階さんのように目をまっすぐ「上」に向けて・・・
私は自由に羽ばたきたい、です。
与えられている大切なもの、を受け止めたいです。
そのとき聞こえてくる声が、大事な「誰かの笑い声」だったら・・・
素晴らしく幸福な人生だと、私は思います。
7階の監督とエンドロールを考察
ここでは7階の住人(職業:監督)とエンドロールについて考察します。
エンドロールの会話で7階の住人の職業が元・売れっ子監督であったことが明らかになります。
映画の中でも明晰な頭脳と冷静な判断力、そしてリーダーシップを兼ね添えた人物として描かれており、「監督」という職業であることにも納得!の人物です。
そんな彼が、若い投資家と話をするシーンが描かれているのですが、これにはどういう意味があったのでしょうか?
わたしは、以下、2点の考察をしました。
- 続編を匂わせる演出
- マネーショーの自体の虚構性
続編を匂わせる演出
まずは1点目の「続編を匂わせる演出」について。
エンドロールでの監督と投資家の会話が『The 8 Show』の続編を匂わせるものである可能性はあります。
このような「匂わせ」の演出は、視聴者の「続きを観たい!」という期待値を上げる効果がありそうです。
次のシーズンだけでなく、スピンオフに対する期待も自然と高まります。
今回のように、会話の内容が「まだ話は終わっていない・・・」というトーンで語られると、続編への布石なの?と思われそうですが・・・
残念ながら、今のところ『The 8 Show』の次シーズン(続編)の情報はありません。
私個人としては、破天荒キャラで美術館を破壊して逮捕されたという「8階さん」のスピンオフ作品が観てみたいです(笑)
2. マネーショーの虚構性
次に、「マネーショー自体が監督の作り出した虚構だった」という可能性があげられます。
エンドロールの中で、7階の監督は「The 8 Show」と書かれた脚本(台本)のようなものを手にしています。
これを目にした私たちは、ドラマの中で展開されてきた登場人物やストーリーは本当に実在していたのか?
すべて頭脳明晰な監督が意図的な構成で創り出した「虚構の世界=映画(ドラマ)の台本」だったのではないか?
という疑問を抱くようになります。
それまで当然の事実として観ていた8人のマネーショーが、突如、「虚構(フィクション)かもしれない」という解釈によって、心理的揺さぶりを受けるのです。
(しかも、投資家がカメラの裏側の視聴者かもしれない、というオマケつきで・・・)。
この心理的揺さぶりとカメラの向こう側にいる黒幕の存在を意識したとき、なぜか心にモヤモヤが広がったのは私だけでしょうか・・・?
最後に・・・
Netflixで配信の韓国ドラマ「The 8 Show / 極限のマネーショー」は、奇想天外な設定とユニークなキャラクター描写で私たちを引き込みます。
賞金稼ぎのマネーゲーム、サバイバル系ドラマかと思いきや、現代社会の闇を浮き彫りにした心理系ドラマでした。
日本で広がりつつある格差や監視社会、心理的プレッシャーといった、私たちが直面している社会問題を反映しながら、極限状態での人間の本性や内面を鋭く描き出しています。
特に印象的なのは、他者に対して「面白さ」を強要する恐ろしさです。
これは現実のSNSやメディアの在り方にも通じるものです。
また、本来の自分と他者からの評価の狭間で揺れる私たちの姿を、鋭く描き出している作品でもあります。
登場人物たちの過去やトラウマが明かされるにつれ、彼らがなぜこのゲームに参加することになったのかが明確になります。
回が進むごとに、彼らに共感し、応援する気持ちが強まるのは、この8名が私たちの心の代弁者だからかもしれません。
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