NETFLIXで絶賛放映中の「ヒーローではないけれど」でト・ダヘ役、「The 8 Show / 極限のマネーショー」で8階住人サラ役を熱演しているチョン・ウヒ。
そんな彼女がストレスに押しつぶされそうになっている30代派遣社員を演じている、韓国映画「めまい 窓越しの想い」。
この映画はどちらかといえば地味で、THE 韓国映画!というようなハラハラドキドキ、奇想天外なストーリーや演出ではないけれど・・・
日々のストレスや言うに言われぬ孤独と向き合う40代、50代の女性の皆さんにぜひ観てほしい映画です。
主演のチョン・ウヒが演じるソヨンは、多忙な仕事、契約社員という不安定な状況、実らぬ恋愛と裏切り、文句ばかりを言いながら依存してくる母親・・・
そんなさまざまな重圧に苦しむ私たちの等身大の姿そのものです。
そして、一歩踏み出す勇気が、どんなに大きな変化をもたらすかを、この映画は教えてくれます。
ソヨンの物語を通して、わたしたち自身が意識、無意識に抱えているストレスや不安と向き合う新たな一歩を見つけるヒントと勇気を与えてくれる、そんなラブロマンス映画です♡
映画の概要
- 日本語タイトル:めまい 窓越しの想い
- 韓国語タイトル:버티고
- 英語タイトル:Vertigo
- ジャンル:恋愛 / ロマンス
- 製作:2019年
- 上映時間:114分
- 監督:チョン・ゲス
- 脚本:チョン・ゲス
- 出演:チョン・ウヒ、ユ・テオ、チョン・ジェゴン
めまい/ 窓越しの想いの予告編
個人的な評価
- 仕事、恋愛、子育て、介護などに強いストレスを感じている人
- 今の生活から1歩踏み出したいと思っている人
- チョン・ウヒのファンの人
- カメラワークの素晴らしさ
とにかくカメラワークが素晴らしい!
チョン・ウヒ演じるソヨンの圧迫された心理描写を見事に表現しています。
ちょっとフラフラと揺れるような(私自身はちょっと酔ってしまいました笑)カメラワークは、タイトルの「めまい」を実感できます。 - チョン・ウヒの演技
いつもながらチョン・ウヒの演技が光ります!
チョン・ウヒはその目の動きだけで、不安・孤独・哀しみ・怒り・戸惑い・切なさ・喜びといった繊細で複雑な感情を表現できる、たぐいまれな女優さんだと思います♡
彼女が出演しているから観る!という韓国映画ファンも多いのではないでしょうか? - ユニークな世界観
映画タイトルが「窓越しの想い」となっているように・・・
この映画はソヨンが勤める高層ビルの「窓越し」にストーリーが展開します。
ガラスに閉じこめられたソヨンの閉塞感や重苦しい世界を表現しつつ・・・
ソヨンと清掃員のグァヌ(チョン・ジェグァン)の間にある心理的な隔たりを独特のユニークな世界観で描写しています。
結末に向けて、2人を隔てるガラスの窓の距離感がどのように変化していくか、も見どころの1つでした。
- キャラクターの深みが薄い
チョン・ウヒが演じるソヨンの心情は細やかに描かれている一方で・・・
清掃員グァヌ、ソヨンの不倫相手であるジンスのキャラに深みがありません。
せめて、清掃員グァヌの内面(姉の死、なぜピエロに扮しているのか)については、もう少し丁寧に描いてほしかったと思います。 - 唐突な結末
終始、重苦しいストレスに押しつぶされそうなソヨンが、清掃員グァヌを意識するようになり・・・
そこから結末への展開があまりに唐突なような気がしました。
都会の第一線で働く30代のデザイナー、ソヨンという女性のリアルからちょっとかけ離れているエンディングではありますが・・・
自分の殻を破って1歩踏み出そうとするときには、決意したその「瞬間」を逃さない行動力が必要なのかもしれませんね・・・。
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キャスト ex
チョン・ウヒ / ソヨン
主人公
30代・契約社員のデザイナー
上司ジンスと不倫をしている
グァヌ / チョン・ジェグァン
高層ビルの窓拭き清掃員
主人公ソヨンに好意を抱いている
ユ・テオ / ジンス
主人公ソヨンの上司で不倫相手
あらすじ(ネタバレあり)
「めまい 窓越しの想い」(버티고, Vertigo)は、チョン・ゲス監督、チョン・ウヒ主演の恋愛 / ロマンス韓国映画です。
以下はその詳細なあらすじです。
ネタバレもありますので、まだ観ていない方はお気をつけくださいね。
主人公ソヨンの現状
ソヨン(チョン・ウヒ)は、ソウルの高層ビルのオフィスで契約社員として働いています。
彼女の生活は一見、安定しているように見えますが・・・
実際には契約社員という不安定な状況、多忙な仕事、不平不満しか言わない母親の話し相手, etc…
ストレスフルな日常に押しつぶされそうになっています。
ソヨンはイケメン上司のジンス(ユ・テオ)と密かに社内恋愛をしていますが、彼との関係も安定せず、不安は増すばかりです。
不安とストレスを抱えるソヨン
さまざまなストレスと言い表すことのできない閉塞感を抱えているソヨン。
退社時には、
「今日も一日 無事に やり過ごした
何とか耐えた」・・・
とつぶやきます。
彼女の勤め先は都会の高層ビル。
けれども不安定な生活を送る彼女は、高所恐怖症です。
「足元が地面に触れ ようやく安心できる」
と言うほどに・・・。
さらには、耳鳴りとめまいを患い、通院中のソヨン。
仲の良い後輩からは、「契約を切られるから病気のことは見つからないように」とアドバイスされています・・・。
心も体も限界ギリギリのところまで追いつめられている彼女の唯一の心の慰めは・・・
会社でも人気の高いイケメン上司ジンスとの社内恋愛。
女性社員の憧れの的であり、仕事のできるイケメン上司ジンスとの交際は、ソヨンにちょっとした優越感を与えています。
が・・・
バツイチの彼との交際は、誰にも話せない秘密のものであり…
どこか煮え切れない彼の態度に不安は増すばかり・・・。
韓国語タイトル「버티고」(持ちこたえて)は、強いストレスを抱えつつ、かろうじて普通の日々を過ごしている彼女の今を表しています。
グァヌとの出会い
そんなある日、彼女の勤める高層ビルで窓の清掃作業が始まります。
高所恐怖症の彼女は高層ビルの窓の外で、ロープにぶら下がりながら平然と作業する、グァヌ(チョン・ジェグァン)を驚きの表情で見つめます。
まさに「窓越し」の出会いでした。
けれども、じつは少し以前に2人は出会っています。
ソヨンがときどき通うお店の看板・道化師、それが清掃員グァヌだったのです。
高所での作業を平然とこなすグァヌ。
またある時は、笑いを誘う道化師のコスチュームに身を包む彼でしたが・・・
そんな彼も、心に深い傷と闇を抱えていました。
お色気動画の配信で生活を支えてくれていた、弟思いの優しい姉が自死していたのです。
姉の死にショックを受け、情緒不安定になっている父の介護も、今はグァヌが引き受けています。。
グァヌは、ソヨンと同じように先の見えない閉塞感の中に生きていたのです。
ソヨンとジンス、グァヌとの関係
窓越しに目を合わせ、出会ったソヨンとグァヌ。
彼はすぐにソヨンの苦しい状況を察します。
そして・・・
彼女がいつか行ってみたいと手にしながらも購入することのなかった異国・アルゼンチンの本を彼女のデスクに届けます。
「忘れ物です。
頭痛にはケボリン」
という、短いけれど気遣いのメッセージを残して。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
それとは裏腹に・・・
ソヨンとジンスの関係は危機を迎えます。
ある日の昼食時、ジンスと若い男性が言い争う姿を偶然、目撃したソヨン。
その日を境に、ジンスはソヨンと距離を置こうとします。
会社の飲み会の帰り道、2人の行きつけのお店からジンスに電話するソヨン。
「待っている」と言う彼女に、「いや 待つな」と告げ・・・
結局、姿をあらわさなかったジンス。
そんな2人の電話のやりとりを切ない表情で聞いていた男性がいました。
飲み会の帰りのソヨンを偶然、見かけて…
後を追った、グァヌでした。
ジンスに冷たくあしらわれ、失望するソヨン・・・。
自暴自棄になり、お酒をあおってナンパしてきた男について行こうとした彼女を救ったのも・・・
やはり彼女を心配して後をついて来た、グァヌでした。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
そんなある日、大事件が起こります。
会社の次長であった恋人、ジンスが解雇されたのです。
防犯カメラに、彼が夜中、社内で性行為をしている姿が映っていたというのです。
その話を偶然、立ち聞きして怯えるソヨン・・・。
ジンスと自分との密会が防犯カメラに映っているのではないか・・・。
が、しかし・・・
防犯カメラに映っていたジンスの相手は、「男」だと知らされます。
恋人ジンスの裏切りを知り、絶望するソヨン。
「なぜ 私だったの?
どうして 私だったの?」
そう呟きながら、彼女は2人の行きつけのお店・Vertigo(スペイン語で「めまい」の意味)を後にするのでした・・・。
ソヨンの決断
ジンスとの別れで傷心のうちに帰宅した彼女を待っていたのは・・・
釜山に住んでいるはずの母親でした。
ソヨンの気持ちや都合などまったくお構いなしに、自分の不平や不満ばかりをぶつけてくる母親・・・。
そんな母親に困惑しつつも、優しく諭し、半ばあきらめの気持ちで部屋に泊めるソヨン。
けれども昼にお酒を飲みながら、父親の悪口を言う母親に、彼女の堪忍袋の緒が切れます。
「誰かのせいにしなきゃ
安心できないんでしょ?
私にも好きに言わせて!
お願いだから
人のせいにしないで
自分の人生を生きて!
(お母さんには)もう会いたくない」
ソヨンの心からの悲痛な叫びでした・・・。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
が、そうは言ったものの・・・
次の日、ソヨンは会社でひどいめまいと耳鳴りに襲われます。
止めようとしてもあふれだしてくる涙、涙、涙。
彼女は人気のない廊下にうずくまり、泣くことしかできませんでした・・・。
デスクに戻った彼女が目にしたのは、
「泣かないで」と書かれた、小さな花束のカードでした・・・。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
ちょうどそのころ…
清掃員のグァヌは、ソヨンの会社のある42階に「不法侵入」した件で、関係者から激しい叱責を受けていました。
「盗みを働いているわけではないが、
なぜ勝手に入るのか?」
という問いに、
一言、「ただ・・・気になって・・・」
と答えるグァヌ。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
同じころ、ソヨンは、以前アルゼンチンの本を贈ってくれた人物…
そして今回、励ましのカードを届けてくれた人物が誰なのか、を探しはじめます。
そして、ビルの中の書店に尋ねたところ…
アルゼンチンの本を買ったのは「道化師」の男だと知らされるのでした。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
ソヨンの苦しみはまだ、続きます。
唯一仲良しだった後輩が、契約を切られてしまうのです。
アイドルダンスまで覚えて、一生懸命頑張っていた後輩に、慰める言葉もなく寄り添うソヨン・・・。
釜山に帰った母親からは、相も変わらず、不平不満とお金の無心の電話がかかってきます。
激しいめまいと吐き気に苦しみ続けるソヨン・・・。
そんな彼女が、会社のカフェテリアでふと、窓に目をやると…
そこにあったのは窓越しに微笑むグァヌの姿。
「元気を出して!」
大きな文字で、窓にそうメッセージを綴るグァヌの姿でした。
+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+‥‥‥‥‥+
それから、間もないある日。
休日出勤したソヨンは、同じく出勤してきた次長と2人きりになってしまいます。
セクハラで有名な次長と2人きりになることに不安を覚えたソヨンでしたが…
狭い給湯室で、次長と居合わせたとき、思いがけない言葉をかけられます。
「きみも大胆だね。
あれからも、イ次長と会っているの?」
と・・・。
防犯カメラをチェックした次長に、ジンスとの関係や社内での性行為がばれていたのです。
窮地にたったソヨンは、
「セクハラはやめてください」
と、かすれる声で懇願するしかありませんでした・・・。
しかし、次長は、
「恥をかきたいのか?
クビにするぞ?」
と、自分の立場を利用してソヨンを脅します。
力づくで襲ってくる次長を拒否するソヨン。
ついには、激しい暴行を受け、彼女は床に崩れ落ちます。
と、同時に、強度の耳鳴りとめまいで放心状態となってしまうのでした・・・。
次長に抵抗する気力もなく、ただ茫然と座り込むソヨン・・・。
そんな彼女がふと、窓に目をやると…
そこには、一部始終を目撃し、ガラスの窓を懸命に叩き割ろうとする、グァヌの姿がありました。
結末 / エンディング
激怒したグァヌの姿を見た次長は、その場を立ち去ります。
トイレの鏡で、血だらけになった自分の顔を、静かにじっと見つめるソヨン。
そして、何か意を決したかのように、屋上への階段を上り始めます。
そこでは、無謀なふるまいをしたグァヌが厳しい叱責を受けていました。
ソヨンはグァヌに近づき、唐突に言います。
「連れてって 下に。
お願い・・・」
と・・・。
それから、ソヨンとグァヌの2人は命綱を装着し…
ゴンドラに乗って、ゆっくり,..ゆっくりと
下へ降っていくのでした。
固く目を閉じ、高所に怯えるソヨン。
そんな彼女に、グァヌは優しく囁きます。
「目を開けて。
大丈夫。
ちっとも怖くない」
その言葉を聞いて、ゆっくりと・・・
風を感じながら目を開けるソヨン・・・。
眼前に広がっていたのは、息をのむほど美しい夕焼けの海でした。
あまりの美しさに、微かな笑みをうかべ、グァヌの肩へもたれかかるソヨン。
静かで、穏やかな時が流れます。
が・・・、ふと下界の喧騒へ目を落とすソヨン。
すると、我に返ったような、困惑したような表情をうかべ・・・
背中にしっかりと固定されている命綱のロックを、自ら解くのでした…。
一瞬、グァヌを見上げ、わずかな笑みをたたえると、真っ逆さまに落下していくソヨン。
あまりに突然の出来事に、とっさに手を差し伸べるグァヌでしたが、間に合いませんでした・・・。
もうダメかと思ったその瞬間!
腰に装着していた命綱が、しっかりと彼女を支えます。
高所で宙吊りになったソヨンを、懸命に引き上げるグァヌ。
「大丈夫。
落ちないから。
絶対に 落ちない」。
そう励ましながら、渾身の力を振り絞って、ソヨンを引き上げ続けます。
そして・・・
ソヨンがゴンドラにようやく届いたところで・・・
2人は長い、熱いキスを交わすのでした・・・。
美しい夕焼けとゴンドラをバックに、
静かな、それでいて凛としたソヨンの声が流れます。
季節が移りゆく…
過ぎた季節を振り返るのは
恐ろしいことだ
これからは
上がっていこう…
感想(ネタバレ含む)
冒頭でも書きましたが、この映画は、ストレスフルな現代の心の痛みと孤独を描いた作品です。
特に、仕事、家事、子育てや夫婦関係、もしくは恋愛、介護などなど・・・
やってもやっても終わらないタスクや課題が山積みの、40代・50代女性の皆さんには共感できる内容が多いと思います。
自分でも「そろそろ、わたし、限界かも・・・」とわかりつつも…
今日一日、今週一週間を何とか「持ちこたえて」(韓国語の映画タイトル「버티고)いる、あなたにぜひ観ていただきたい映画です。
主人公ソヨンは、それこそ色々なストレスを抱え、それが原因で「めまい」に苦しむ30代女性。
過度の仕事を押し付けられ、セクハラや女性上司のちょっとした意地悪に耐えてはいるものの、契約社員という不安定な立場。
自分の都合で電話をかけてきては、お金の無心と不平不満を訴える母親。
そこには娘を思いやる気持ちも、愛情もありません。
そんな彼女の唯一の心のよりどころは、イケメン上司ジンスとの秘密の関係。
けれども、その関係さえ、ジンスの裏切りによって破局を迎えます。
自分たち2人が密会していた同じオフィス内で、しかも相手は「男性」という最悪の別れでした。
ここで、ジンスが「ゲイ」の設定になったのは、彼との関係が「報われないもの」であることを強調するためでしょう。
2人の行きつけのお店・Vertigoで、ジンスと最後の別れをした後、ソヨンは思わず吐露します。
「なぜ 私だったの?
どうして 私だったの?」
と・・・。
この、「初めから結ばれるはずのなかったジンスとの関係」が彼女の孤独感をさらに深め、その深い孤独が彼女の「めまい」を悪化させる原因となっていきます。
そんなときに出会ったのが、清掃員グァヌでした。
出口のない閉塞感と、同じような痛みを抱えた2人・・・。
グァヌは誰よりも早く、「窓越し」の向こう側からソヨンの不安と傷ついた心に気がつきます。
優しかったがゆえに重圧に耐えきれず自死した姉と、目の前のソヨンの姿が重なったのかもしれません。
そうでなければ、グァヌのソヨンへの愛情があまりに唐突すぎる気がします。
遠くへ行きたいと望んだソヨンへ届けた本のプレゼントも、
「元気を出して!」と書き贈った、窓越しのメッセージも、
カフェをオープンしたいと願いつつ… この世を去った姉へ…
届けたかった気持ちかもしれません。
ソヨンを励ましながら、自分自身を励まし、勇気づけていたのではないでしょうか?
これまでのグァヌは道化師の格好をして、自分の内面の痛みを隠し、他人を喜ばせることで自らの孤独を癒そうとしていました。
休みの日は家事を引き受け、情緒が不安定な父親の面倒を見、職場では高層ビルの屋上にいる仲間のために、階下へお弁当を買いに行きます。
自分は食べないのに、です。
そんなグァヌが、ソヨンと出会って、哀しみと痛みを内に隠した道化師の殻を破って、1歩前へと進み出ます。
「ちっとも怖くないから、
目を開けて」
と・・・
目の前の現実を直視するように、優しく諭します。
命綱を外して真っ逆さまに落下していくソヨンに、
「大丈夫。
落ちないから。
絶対に 落ちない」。
と、下を向いて生きることを拒絶するのです。
ソヨンは、そんなグァヌの寡黙であるけれど、静かな存在感と無言の理解に心救われ・・・
これまでにない「愛」を感じたのかもしれません。
過重のストレスで、足元がおぼつかない高所を恐れるようになったソヨン・・・。
私は、彼女のその気持ちがよく理解できます。
わたし自身、若いとき、あんなに大好きだった観覧車やジェットコースターに、乗れなくなってしまったことがあります。
「足元が地面に触れ ようやく安心できる」
と呟く、ソヨンの気持ちそのものでした。
だからこそ、彼女は自分のストレスや不安、恐怖に向き合うために…
一番の恐怖、「高所恐怖」というラスボスに果敢に立ち向かったのでしょう。
人は最も大きな恐怖を克服することで、
他の小さな恐怖にも立ち向かう自信が生まれる
と聞いたことがあります。
自分の殻を破りたい!と思ったときには、
中途半端に、ではなく
ソヨンのように「ラスボス退治」をする勇気を持ちたい・・・
と思わされたシーンでした。
とは言うものの・・・・
ゴンドラに乗って、「高所恐怖症」と向かい合った…
という単純な話では終わりませんでした。
息をのむような夕焼けの海の美しさに驚嘆しながら…
ソヨンは、ふと日常の喧騒に目を落としてしまうのです。
その刹那、背中の命綱のロックを外してしまうソヨン。
ストレスに満ちた日常を思い出し・・・
自らの人生を終わらせたいという衝動に駆られたのでしょう。
それはまさしく、「衝動」でした。
最高と思える瞬間、日常と抱えているストレスを思い出して、最悪の気持ちになってしまう・・・
大なり小なり、同じ気持ちを経験した人も多いのではないでしょうか?
サザエさん症候群も、何となく、これに少し近いような気がします。
(私は、毎週、これを経験しています 笑)
家庭でも、友人関係でも、職場でも・・・
身近にグァヌのような人が1人でもいてくれたら・・・
思わず、そう思ってしまうのですが、
ガラスの窓、閉じ込っている小さな世界から1歩を踏み出すのは、「私」にしかできないこと。
ここぞ、というときは、目を見開いて・・・
私にとっての「ラスボス」に向かい合ってみよう。
日常の喧騒ではなく、日々の問題ではなく、
「今」という瞬間に見いだされる「美しさ」に感動できる人になりたい。
「私の」グァヌを探すのではなく、
身近な「誰かの」グァヌになりたい・・・
と思わされた映画でした。
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