映画の概要

- 日本語タイトル:『バーニング 劇場版』
- 韓国語タイトル:『버닝』
- 英語タイトル:Burning
- 製作:2019年
- 上映時間:148分
- 監督:イ・チャンドン
- 脚本:イ・チャンドン、オ・ジョンミ
- 原作:村上春樹
- 主演:ユ・アイン
- 共演:スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソ
あらすじ(ネタバレなし)

小説家を目指しながら、バイトで生計を立てるジョンス(ユ・アイン)は、偶然幼馴染のヘミ(チョン・ジョン ソ)と出会う。ヘミからアフリカ旅行へ行く間、飼っている猫の世話を頼まれるジョンス。旅行から戻ったヘミはアフリカで出会ったという謎の男ベン(スティーブン・ユァン)を紹介する。ある日、ベンはヘミと共にジョンスの家を訪れ、自分の秘密を打ち明ける。“僕は時々ビニールハウスを燃やしています”―。そこから、ジョンスは恐ろしい予感を感じずにはいられなくなるのだった・・・。
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大学卒業後、アルバイトをしながら小説家を夢見る青年ジョンス(ユ・アイン)は、ある日、幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)と偶然、再会します。
整形で見違えるほど美しくなったヘミとジョンスは意気投合。
ヘミの部屋で関係を持ちます。
ヘミはジョンスに長年の夢だったアフリカ旅行に行くことを告げ、その間、飼い猫「ボイル」の世話を頼みます。
快く引き受けたジョンスは、彼女のアパートで餌やりを続けるのですが…。
不思議なことに一度も猫の姿を見ることはありませんでした。
やがてアフリカから帰国したヘミは、現地で知り合った謎めいた青年ベン(スティーヴン・ユァン)を連れてきます。
ポルシェを乗り回し、高級マンションに住むベン。
何をして生計を立てているのかも明かさない裕福なベンの存在に、貧しい牛農家の息子であるジョンスは複雑な感情を抱きます。
そんな三人の関係は微妙なバランスを保っていましたが、ある日、ベンはジョンスに奇妙な「趣味」について打ち明けます。
その後、突然、ヘミが姿を消し、音信不通に。
彼女を探すジョンスは、次第にベンへの疑念を募らせていくのですが…。
村上春樹の短編「納屋を焼く」を原作としたこの作品は、現代韓国社会を舞台に、愛と嫉妬、階級格差、そして若者たちが感じる怒りと喪失感を描いたミステリーです。
『バーニング 劇場版』の予告編
SNS + 55kankokuの評価
SNSの評価
『バーニング 劇場版』は国内外の批評家から高い評価を受けています。
映画評価サイトのメタクリティックでは91/100という驚異的なスコアを記録し、ロッテントマトでは批評家支持率95%、観客スコア82%という好成績を残しています。
カンヌ映画祭ではスクリーン・デイリーの批評家採点で史上最高点を記録し、国際映画批評家連盟賞を受賞。
各国の映画祭でも数々の賞を獲得しました。
前米国大統領バラク・オバマも2018年のお気に入り映画として選出しています。
一方で、SNS上では「難解すぎる」「結末が理解できない」という声も散見されます。
特に韓国国内では「あまりにも曖昧で解釈が難しい」という反応から「深い余韻が残る傑作」まで、評価が大きく分かれているようです。
Twitter(現X)では「ヘミは殺されたのか?」「ラストの意味は?」といった考察が今も活発に投稿されており、公開から数年経った今も議論が絶えません。
55kankokuの評価

『バーニング』は表面的には三角関係のミステリーに見えますが、現代韓国社会の階級格差、若者の喪失感、そして抑圧された怒りをメタファーとして描いています。
特に印象的なのは、ヘミの存在です。
彼女は物語の中盤で姿を消しますが、それは韓国社会の中で声を奪われた女性の象徴とも言われています。
彼女自身、パントマイムを習い、「存在」と「不在」についてジョンスに語っています。
大麻を吸ったあと、夕焼けを背景に上半身裸で蝶のように踊るシーンは、はっと息を飲むような美しさ。
束の間の自由と解放を切なく、儚く表現した最高の演出となっています。
このシーンを見るためだけにでも、この映画を観る価値がある!と思うほどの名シーンです。
村上春樹の原作「納屋を焼く」と比較すると、イ・チャンドン監督は韓国社会の文脈を巧みに取り入れながら、より社会性の強い物語に作り変えています。
原作の持つ曖昧さや謎めいた雰囲気は残しつつも、家族の崩壊、階級の断絶という要素を加えることで、より私たちの心にストーレートに訴えかけるものがあります。
静かに燃え上がるような緊張感と、最後まで解けないモヤモヤとした謎は、まさに「スローバーン・スリラー」の傑作。見終わった後も長く余韻に浸れる、そんな映画です。
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