韓国の百想芸術大賞で受賞歴のある演技派女優チョン・ウヒと演技ドルの先駆者、イム・シワンが共演した韓国版「スマホを落としただけなのに」。
ネットフリックス・オリジナルとして公開中の韓国映画ですが、なんと日本語の吹き替えもあります。
今回は、韓国版のキャスト、あらすじ(ネタバレあり)、そして日本版との違いなどを取り上げたいと思います。
日本語版を観た方もそうでない方も、また原作の小説ファンの方もぜひ最後までご覧ください♡
韓国映画版リメイク「スマホを落としただけなのに」の魅力を少しだけでもお伝えできれば嬉しいです!
映画の概要
- 韓国語タイトル:스마트폰을 떨어뜨렸을 뿐인데
- 英語タイトル:Unlocked
- 監督・脚本:キム・テジュン
- 原作:志駕晃『スマホを落としただけなのに』
- 配信:Netflixオリジナル
- 吹き替え:日本語の吹き替えあり
あらすじ(ネタバレあり)
韓国のスタートアップ企業で働くナミ(チョン・ウヒ)は忙しくも充実した毎日を送っている。
そんな彼女は、目覚ましに、音楽を聴くのに、ショッピングに、SNSに、交通状況の確認に、バスの支払いに、口コミに、スケージュール管理に、ゲームに、そうありとあらゆることにスマホを使っている。
そんな彼女がある日、酔ったバスの中でスマホを落としたことから悲劇が始まる・・・。
ナミがスマホを落としたその翌朝、彼女の親友であるウンジュ(キム・イェウォン)がナミの携帯に電話をかけてくる。
ナミのスマホを拾った男ジュニョン(イム・シワン)はそれに気づくと、すぐに女性の声音で応答する。
落ちていたスマホをバスの中で拾ったが警察に届けましょうか?と。
なぜか、友人が口にしたイ・ナミの名前をメモに取りながら・・・
電話に出たのが女性だったということもあり、気を許したウンジュは落とし主のナミに連絡をしてみると話すと、電話を切る。
昨夜遅くまで飲んでいたナミは眠りこけており、スマホを落としたこと自体に気づいていなかった。
友人のウンジュに起こされたナミはさっそく拾い主に電話をかけ、父親が経営するカフェにスマホを届けてもらうことになる。
が、このときすでに拾い主であるジュニョンはナミのSNSのアカウントを探し当てていた。
しかし、スマホのパスワードを見つけ出すまでには至らず、カフェでの約束1時間前にナミのスマホの画面を破壊する。
何も知らないナミは落としたスマホを受け取るためにカフェへやって来る。
そんな彼女に拾い主から電話が・・・。
内容は、「スマホの画面が割れてしまった。修理店に預けて、すでに支払いも済ませている」というもの。
ナミは戸惑いながらも、拾い主が告げた修理店の住所を訪ねる。
そこは薄暗くて人気のない、いかにも怪しげなビルだった。
ナミはその中へ入るのに躊躇を覚えたが、大事なスマホを受け取るため、と心を決して修理店のドアを開ける。
中へ入ると、受付台の上に自分が落としたスマホが置いてあった。
それを手にするやいなや、帽子とマスクで顔の見えない男性店員が無言のままで「修理依頼書」を手渡す。
ナミはほんの瞬間だけ迷いを見せるが、その「修理依頼書」にスマホのパスワードを記入してしまう。
店員は奥の作業場へ行くと、割れた液晶画面を修理すると同時に彼女のスマホのデータをコピーし、スパイウェアを仕込むとカメラもハッキング。
いとも簡単に、ナミのスマホがあたかも2台あるかのようなコピー機を作り出して、何も知らないナミに返却する。
これで拾い主であり、偏執的なストーカー男、ジュニョンの目的は達成。
ここから陰湿で悪質、かつ執拗なストーカー行為が始まる。
ナミのスマホを使って、彼女の公私にわたる全てを記録していくのだ・・・。
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まずこの陰湿なストーカー・ジュニョンは常連客のフリをして、ナミの父が経営するカフェへやって来る。
そして、ごく限られた人にしか提供しない裏メニューのドリンクを注文し、ナミの警戒心を解くジュニョン。
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一方、同じころ、ジュニョンの父である刑事のジマンは、家出をした息子(ジュニョン)が病弱な妻と連絡を取り合っていることを同僚刑事から知らされる。
妻の携帯を盗み見た彼は、息子ジュニョンが頻繁に引っ越しを繰り返していること、また引っ越し先の新しい住所に妻がこっそりと差し入れを送っていることを知る。
自分が知らないところで2人が連絡を取り合っていた事実を知り、一抹の疎外感を感じる刑事ジマン。
しかし、これは彼の苦悩のほんの始まりでしかなかった。
息子ジュニョンのお気に入りだった森の中から、なんと連続殺人事件の被害者である女性たちの遺体が複数見つかったのだ。
卑劣で残忍な連続殺人鬼は家出をした息子なのか・・・。
殺人犯を追い詰める刑事としての立場と愛する息子を心配する父親としての葛藤の中で板挟みとなるジマンであった・・・。
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ナミのスマホの暗証番号を手に入れたジュニョンは昼夜問わず、彼女の生活を監視する。
玄関の暗証番号、住所、通勤方法、ナミの裏アカウント、勤務先、銀行の残高etc…
ありとあらゆるナミの個人情報が暴かれていく・・・。
そしてジュニョンはナミの人間関係を把握し、近しい人をナミから引き離し彼女を孤立化させるために「消す人リスト」を書き出すのだった・・・。
信頼し合っていた勤務先の社長と同僚たち、無二の親友、そして子煩悩な父・・・。
ジュニョンの巧妙な罠にはまり、親しい家族、友人、仕事仲間から孤立化し、窮地に陥っていく主人公、ナミ・・・。
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冷酷な女性連続殺人事件と陰湿なストーカー犯罪が絶妙に絡み合った、サイコパス+サスペンス韓国映画、「スマホを落としただけなのに」。
日本の人気小説のリメイク版ですが、犯人の設定も主要人物のキャラも全く別物。
北川景子さん主演の日本版を観た人は、その違いに着目しながら鑑賞するのも面白いと思います。
(実際、私も日本版 → 韓国リメイク版 → 日本版)と3回視聴しました (笑)
この違いについては後ほど詳しく後述したいと思います。
韓国リメイク版は、さすがの韓国映画クオリティー。
緻密な心理描写のあるサスペンス映画(ドラマ)が好きな韓国映画ファンの方にはおススメです!
キャスト ex
チョン・ウヒ / ナミ スマホを落とす主人公
イム・シワン / ジュニョン ナミのスマホを拾う男
キム・ヒウォン / ウ・ジマン 刑事・ジュニョンの父
パク・ホサン / ナミの父
カフェのオーナー
キム イェウォン / ウンジュ
ナミの親友
オ・ヒョンギョン / オ社長 ナミの勤務先の社長
チョン・ジノ / キム・ジョンホ 失踪捜査チームの刑事 ジマンの同僚
リュ・ソンヒョン / ジマンの上司 刑事
日本版との違い
それでは原作の日本版と韓国映画リメイク版の違いについて考えてみたいと思います。
- スマホを落としたのは誰か?
- 絆のテーマは何か?
- 犯人を追い込んだものは何か?
- 女主人公の立ち位置
- 犯人は誰か?
まず、1点目。
そもそもの違いはスマホを落としたのは誰か?、という点。
日本版は主人公・麻美(北川景子)の彼氏がタクシーの中にスマホを置き忘れたところから物語が始まります。
が、韓国版は主人公ナミ本人が飲み会の帰りのバスでスマホを落とします。
そして最初から最後までこのナミがストーリーの中心であり、主体的に犯人と対峙していくのです。
2点目は、映画の中でのテーマは何か?ということ。
日本版では麻美と彼氏である富田との男女の愛の絆が協調されています。
一見、完璧に見える麻美は実は暗い過去の秘密を背負っている・・・。
そんな2人が試練を乗り越え、お互いへの愛を再確認して新しい人生をスタートさせるというハッピーエンド・ストーリ。
それに比べて、韓国映画のほうでは男女のラブストーリーはまったく出てきません。
男女の愛に代わって協調されているのが、親子の愛と葛藤、そして友情です。
そして3点目。
連続殺人事件の犯人を追い込んだものは何か、という問題。
日本版では幼少期に母親から虐待を受けていた犯人が、母親に似た長い黒髪の女性に性的倒錯を覚えて犯罪を犯していました。
犯人を冷酷な犯罪に駆り立てたのは、家族(母親)による児童虐待でした。
両親による虐待事件が珍しくなくなった日本の世相を映す悲しい社会問題の1つだと思います。
これに対して、韓国映画では「無戸籍」の犯人による背乗りがテーマとなっています。
日本以上に貧富の格差が広がっている韓国の、これまた悲しい現実を取り扱っているのかもしれません。
次に4点目を見ていきましょう。
4点目の違いは女主人公の立ち位置です。
1点目でも少し触れましたが、韓国版では主人公ナミ本人がスマホを落とし、その後も犯人と主体的に対峙します。
(ラストでは驚くべき反撃に出ます。)
それに比べ、日本版の麻美本人は犯人と決死の闘いはしません。
男女の愛がテーマなだけに、彼氏の富田が麻美の窮地を救い、救出します。
韓国女性の芯の強さと、女性らしさが重視される日本の女性観が際立つ違いのような気がしました。
そして最後に違いの5点目。
連続殺人事件の犯人は誰か?という点です。
韓国リメイク版では、映画の冒頭から犯人のジュニョンが登場し、彼の陰湿なストーカー行為の一挙手一投足が詳細に描かれます。
そのため、観る私たちは余計に彼の不気味さ、陰湿さ、冷酷さを感じ、戦慄を覚えます。
犯人の隠された欲望と残酷さを知るがゆえに、主人公ナミに感情移入し、ともにサイコパスを嫌悪し、恐怖を感じてしまう・・・。
それに比べて日本版では、最後まで犯人が誰かはわかりません。
そのため主人公に共感し、麻美の恐怖を「疑似体験する」といったリアル感はありません。
その代わりに、サスペンス映画の王道、「犯人探し」とストーリーの「どんでん返し」を楽しむことができるのが日本版の演出かもしれません。
感想
スマホは今や私たちの必需品。
スマホなしの生活、ましてやスマホを失くしてしまったときの絶望感と恐怖は想像に難くありません。
それゆえに、ナミの陥った窮地に私たちは共感し、感情移入してしまうのでしょう。
実際、おっちょこちょいの私はスマホを2回落としたことがあります。
1回目は百貨店のトイレの中。
2度目は昼の時間帯にバスの座席に・・・。
これは主人公ナミと一緒ですね (笑)
幸いどちらも親切な方に拾われて、無事に手元に戻ってきました。
私はこれで良かったのですが・・・
実は娘もスマホを落としたことがありまして…
このときは家の近くの路地で落としたようなんです。
(急いでいて、慌ててスマホをバッグの中に入れた記憶があるそうです)。
紛失に気付いて慌てて帰宅した娘。
急いで私のスマホから失くした携帯に電話してみるものの、なぜかフル充電だったはずの携帯の電源がオフに・・・。
ドコモの追跡サービスに依頼したところ、最後の位置確認は本人の記憶のとおり、我が家のすぐ近くの路地でした。
無断でスマホを見られないように暗証番号を設定していたし、紛失届とともにロックもかけたので使用はできないはずなのですが・・・
なぜか数日後に再び電源が入っており、我が家から30分ほどのところで位置確認ができました。
その翌日にはまた位置情報が動き、かなり遠方へと移動・・・
その後、数時間後に電源が再びオフとなり・・・
それ以降は追跡ができなくなってしまいました。
(と同時に、娘も新しいスマホに変えました)。
誰かに拾われ、持ち去られただけなのかもしれませんが・・・
拾い主がITに長けている人で、悪用されたらどうしよう!
と、その時は気が気ではありませんでした・・・。
そんな私自身の個人的な経験もあったので、なおのこと、この映画に引き込まれたのかもしれません。
スマホを奪われたことによって仕事、人間関係が破壊され、疑心暗鬼になっていくナミの不安、恐怖、絶望、哀しみ、怒りが繊細に描かれていて、思わず感情移入していくストーリー。
これがこの韓国映画の最大の見どころだと思います。
それと同時に、爽やかな笑顔で好青年を演じるサイコパス・ジュニョンが引き起こす連続殺人事件のサスペンス要素が絶妙なバランスで絡み合っています。
永作博美の韓国版!とも言えそうなチョン・ウヒ(ナミ役)、韓国イケメン俳優ながら薄気味悪いストーカー役も板につくイム・シワン。
この映画にぴったりの配役だと思います!
それに加えて、中年男の哀愁を漂わせた刑事ジマン役のキム・ヒウォン、ナミの愛情深い父を演じたパク・ホサンなど名脇役も素晴らしかったです。
この韓国映画を観終わって、特に印象に残ったシーンは2つ。
サイコパスな殺人犯・ジュニョンがナミに言い放つ一言。
「24時間以内に
誰かから連絡が来たら
生かしてやる。
でも連絡が来たことは一度もない。
指1本でつながれるご時世では
縁が切れるのも
それだけ簡単だってことだ」
生まれたときから複雑で壮絶な環境で育ったにちがいない・・・
「無戸籍」の彼が語る言葉だからこそ重みがあります・・・。
他者との縁が薄かったからこそ、
誰よりも真実な絆を求めていたのかもしれませんね…
手軽なスマホ時代だからこそ、
家族や友人、関わる人たちに関心と愛を伝えることが必要なのだと考えさせられた1シーンでした。
そして映画のラスト・シーン。
無事に救出され、親友とも仲直りして、元気になった父とカフェで働くナミ。
そんな彼女を「応援したい!」という善意のもと、集まる人、人、人。
カフェで働くナミを盗撮する人たちの根底にあるのは果たして善意か、好奇心という名の野次馬根性か・・・。
仮に善意だったとしても、ある日、ちょっとしたきっかけでその善意が悪意に代わり、次なる事件や犠牲者が生まれることを暗示するような、そんなモヤモヤ感が残るラスト・・・。
それはいつでも、誰にでも起こり得る悲劇。
ただ「スマホ(自分の分身)を落としただけ」で・・・。
韓国での評価
Filmarksの総合評価は3.6
ドラマ・映画好きの人はたいていお世話になっているサイト、filmarks(フィルマークス)。
韓国版「スマホを落としただけなのに」にも5,126件のレビューが集まっていました(2023年9月現在)。
総合評価は3.6。
大絶賛というよりは、中の上といったところでしょうか・・。
「怖い」評価が圧倒的
投稿者のレビュー評価を読んでみると・・・
・日本版よりも怖かった
・イム・シワンの演技が良かった
・日本版より韓国版のほうが好きだ
・日本版と韓国版のストーリが全く違う
という意見に集約されるようです。
おおむね、日本版より韓国版のほうが高評価。
私も日本版より韓国版推しなので良かったです♡
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